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大腸ポリープ

概念

大腸ポリープとは、大腸粘膜が何らかの隆起性病変(盛り上がった部位)ができる病態の総称です。多くは良性ですが、種類や大きさによっては将来「大腸がん」に進行する可能性があります。大腸がんは日本人に非常に多いがんのひとつで(2023年大腸がん死亡数 男性第2位、女性第1位)、特に50歳以降に増加します。その多くは、もともと良性のポリープが時間をかけてがん化したものと考えられています。そのため、ポリープの段階で発見・切除することは、大腸がん予防の最も確実な方法のひとつです。
近年は、便潜血検査や大腸カメラの普及により、早期にポリープが見つかる機会が増えました。無症状でも見つかることが多く、定期的な検査が重要です。

種類

大腸ポリープには、様々な種類があり、性質やがん化のリスクが異なります。ここでは上皮性(上皮組織から発生するもの)、非上皮性(上皮組織以外からから発生するもの)、腫瘍性、非腫瘍性で分類して示します。

上皮性腫瘍性ポリープ

通常型腺腫:最も高頻度であるが、まれに腺癌に進行することがあります。このため、前がん病変とも考えられています。
腺癌:上記の腺腫と、可能な限り内視鏡で鑑別を行います。上記の腫瘍径や形態に加えて、表面の性状、易出血性、陥凹の有無、光沢などの所見が鑑別のポイントです。その上で、深達度診断(どの程度、深くまで浸潤しているか)を行い、治療方針を決定します。
その他の上皮性腫瘍性ポリープとして、無形性鋸歯状病変(SSL)や鋸歯状腺腫(TSA)などがあります。

上皮性非腫瘍性ポリープ

日常診療で多くみられる過形成性ポリープはこの部類に入ります。過形成性ポリープは、主に直腸やS状結腸にみられ、数mm程度の小さいものが多いです。基本的にがん化のリスクは低いですが、一部の特殊型(鋸歯状病変)はそのリスクがあります。その他の上皮性非腫瘍性ポリープは、原因が多彩で比較的まれなものが多いとされ、内視鏡的には腫瘍性ポリープと鑑別が困難な症例も多いです。若年性ポリープ、Peutz-Jeghersポリープ、粘膜脱症候群、inflammatory myoglandular polyp、炎症性ポリープ、colonic muco-submucosal elongated polypなどがあります。

非上皮性腫瘍性/非腫瘍性ポリープ

非上皮性であるため、表面の構造のみでは鑑別が困難な場合があります。この場合、内視鏡での粘膜面の形態や色調の評価に加え、発生部位、単発/多発、病変径や病変の立ち上がり、超音波内視鏡所見、硬さなどが評価の基準となります。腫瘍性ポリープとして脂肪腫、平滑筋腫、神経原性腫瘍など、非腫瘍性ポリープとしてAL型アミロイドーシス、腸管子宮内膜症、腸管嚢胞性気腫症などがありますが、その診断により治療を要するもの、経過観察でよいものなど、多岐にわたります。

症状

多くの大腸ポリープは、自覚症状がほとんどありません。そのため、検診や人間ドックで偶然発見されることが多いです。症状が出る場合は以下のようなものがあります。
便潜血陽性:肉眼では分からない少量の出血が便に混じり、便潜血検査で発見されます。
便に目で見える血が混じる(肉眼的血便):ポリープが大きくなると、肉眼でわかるような出血しを認めます。
便通異常や腹部違和感:大きなポリープにより大腸内が占拠されると、便秘や下痢、腹部違和感が起こることがあります。
ただしこれらの症状は、内痔核や大腸がんなどの他の疾患でも生じるため、症状のみで診断することは困難です。自己判断せずに検査を受けることが大切です。

原因やリスク

大腸ポリープができる原因はひとつではなく、生活習慣・加齢・遺伝などが複合的に関与しています。以下に一般的な大腸腺腫/大腸がんのリスクを示します。
年齢: 50歳以降で次第に増加します。
食生活:高脂肪・高カロリー食、赤肉や加工肉の多量摂取はリスクを上げると報告されています。野菜や食物繊維の不足も関与します。
肥満・運動不足:メタボリックシンドロームとの関連が指摘されています。
喫煙:喫煙は大腸がんのリスクとされています。
遺伝的要因:家族に大腸ポリープや大腸がんの方がおられる場合は注意が必要です。その他、家族性大腸腺腫症(FAP)、リンチ症候群などの遺伝性疾患もあります。
既往歴:ご自身の過去に、ポリープや大腸がんを切除した人は再発の可能性があります。

治療

大腸ポリープの治療は、内視鏡的切除が基本となります。しかしながら腫瘍径や形態により、外来で内視鏡切除が可能か、入院を要するか、外科的切除が必要かなど、適宜判断を要します。放置しても自然に消退することはほとんどなく、特に腺腫性ポリープや鋸歯状病変は切除が推奨されます。主な治療法は以下のとおりです。
内視鏡的ポリープ切除(ポリペクトミー):小型のポリープに対して、スネア(ワイヤー)で切除します。当院で最も多く用いられている切除法です。
内視鏡的粘膜切除術(EMR):平坦型ややや大きめのポリープに対して行います。粘膜下に液体を注入してから切除します。
内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD):より大きな病変やがんを疑う場合を一括切除する場合に行われます。入院が必要となるため当院では行っておらず、適切な病院にご紹介させて頂きます。
外科手術:上記の内視鏡治療が困難な場合に選択されます。
治療後の注意:治療後の出血を避けるために、5日程度は激しい運動や飲酒を控えることが必要です。また血便、腹痛、発熱など通常と異なる症状がみられた場合は、すぐ当院もしくは近隣の医療機関へ連絡して下さい。なお内視鏡治療を行った後に、病理検査でがんが見つかった場合は、追加治療が必要な場合があります。

予防

大腸ポリープは、生活習慣の改善と定期的な検査で予防・早期発見が重要です。
バランスの良い食事:赤肉・加工肉・高脂肪食を控え、野菜・果物・海藻・きのこ類など食物繊維を多く摂取します。
適正体重の維持、適度な運動:肥満はリスクを上げるため、BMI 23以下程度を目指します。週に150分以上の中等度運動が推奨されます。
飲酒・喫煙の制限:禁煙はもちろん、飲酒は適量(1日23g以下のエタノール)を心がける。
定期的な便潜血検査、大腸カメラ:50歳以上、または家族歴のある方は特に重要です。ポリープ切除後は再発予防のため、医師の指示に従い定期的な検査を行うことが推奨されています。

まとめ

大腸ポリープは多くの場合症状がなく、知らない間に大きくなることがあります。しかし、ポリープの段階で発見・切除すれば、大腸がんはほぼ確実に予防できます。検診や内視鏡検査は、将来の健康への「投資」です。特に40~50歳を過ぎたら一度は検査を受け、自分の腸の状態を知っておくことが大切です。

 

監修:静岡清水桜が丘おなかと胃・大腸カメラのうおたに内科クリニック 院長 魚谷貴洋(日本内科学会:日本内科学会認定医・総合内科専門医、日本消化器病学会:日本消化器病学会専門医・指導医・学術評議員、日本消化器内視鏡学会:日本消化器内視鏡学会専門医・指導医・学術評議員)

 

参考文献
胃と腸 第59巻 第2号 2024年2月
厚生労働省「2023年人口動態統計(確定数)」
公益財団法人 日本対がん協会
国立研究開発法人 国立がん研究センター がん対策研究所 予防関連プロジェクト

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